自著を語る

「帝国主義」の悪魔祓いを

『人間の叡智』 (佐藤優 著)

佐藤 優Masaru Sato作家

 大学生や、若い社会人に講演をするとき、私はこう話しています。

「みなさんが生きるのは、つらい時代です。就職活動はいっそう厳しくなるし、ようやく入社できても、給料は横ばい、むしろ下がるかもしれない。

 なぜなら、日本の置かれた国際関係が非常に厳しく、あなたたち個人の努力によって解決するには限界があるからです」

 みな暗い顔になり、どうすれば、日本と私たちが生きのびられるのか教えてほしい、と尋ねられます。

 これまでの本でも、こうした専門的なことをわかりやすく書いてきたつもりですが、「ちょっと文章が難しい」「中学生の息子や娘にも読めるように書いてもらえないか」と注文を受けることがあります。そこで今回は、思い切って語り下しで、わかりやすい本を作ることにしました。

 まず、日本をとりまく国際環境とはどんなものか。私は「新・帝国主義」の時代と呼んでいます。

 いま、国際社会のゲームのルールは、19世紀末から20世紀の帝国主義に似てきています。植民地分割をめぐって列強が戦争をしていた頃と同じく、「食うか、食われるか」の弱肉強食を原理とします。

 帝国主義国はまず、自国の利益だけを最大限に主張し、相手国が怯み、国際社会も黙っていると、理不尽なことでもごり押ししていく。尖閣諸島の領有権の問題を見ればわかるように、こういうことを今やっているのが、中国です。

 しかし、国際社会から「やりすぎじゃないか」と顰蹙(ひんしゅく)を買い、相手国も必死になって抵抗すると、帝国主義国は国際協調に転じます。なにも心を入れ替えたからではない。やりすぎると諸外国の反発を食って損をするから、妥協したまでです。

 日本人は「帝国主義」を悪だと考え、戦前の遺物のように思っていますが、はたしてそうでしょうか。

【次ページ】生き残りのために必要な、人間の叡智

人間の叡智
佐藤 優・著

定価:819円(税込) 発売日:2012年07月20日

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2014年8月号

<自著を語る> 未須本有生 別宮暖朗 鈴木秀子 堀川アサコ 篠 綾子

2014年8月号

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