解説

『あまからカルテット』 解説

『あまからカルテット』 (柚木麻子 著)

解説酒井 順子|エッセイスト

 四人は女子校の出身であるわけですが、女子校出身者ならではの男気も、この作品の中では随所に見られるのでした。女子校というと、女だけのドロドロした世界と思われやすいのですが、それは大きな誤解。女であれば誰しもドロドロしたものを分泌しているのは事実ですが、男性の視線があるためにドロドロが隠蔽されてますます濃度を増すのが共学だとしたら、女子校の場合はドロドロが分泌されてもすぐに表出して乾燥していく環境なのです。

 女しかいない女子校はまた、「男に頼る」という発想が生まれず、何でも自分達で完結させなくてはなりません。女子校出身者にしばしば男気あふれる人がいるのはその為で、本書においても男気が噴出するシーンが数々出て来ます。

 たとえば、美容部員の満里子。由香子が落ち込んでいると聞けば、化粧品を持参で彼女の家へ行って、彼女をきれいにすることによって元気づける。そして大晦日、福袋を全て詰め直す羽目になった時も、四の五の言わずに後輩達の尻を叩きながら業務に邁進。ドアが締まって閉じ込められてしまった時も、諦めずに策を練る……。

 時には友達を全力で助けるけれど、時にはそうっとしておく。また、時には友達を手放しで褒めつつ、時には言いにくいこともズバリと言う。時と場合、そして相手に合わせた友情のさじ加減が上手になってくるのも、学生時代の友人ならではでしょう。長年付き合っているので、相手の性格を見て対応できるし、「こんな時は、こういう対応」というマニュアルも、できてくるのです。

 人に弱みを見せたり、助けを求めることを潔しとしなかった薫子が、次第に友達の助けを素直に受け入れることができるようになったのは、年月を経て熟成してきた友情の機微の成果です。地味な主婦であった由香子が、次第に働く女としての自覚と自信を深めてきたのも、友人達がいたからこそ。

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あまからカルテット
柚木麻子・著

定価:560円+税 発売日:2013年11月08日

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