自著を語る

週刊文春エッセイ連載30年
妄想から現実へ

『「結婚」まで よりぬき80s』 (林真理子 著)

林 真理子

 最初の一編の「ほっかほっか亭とエステティックサロン」、よく覚えてますよ。ダイエットの先生にお米を食べるように指示されて「ほか弁」の行列に並ぶんだけど、安さを求めて並んでる他の人たちと私は違う、私はお金がないわけじゃない、目的があって並んでるんだから、と心の中で見栄を張るっていう……この時の私、大流行してた鈴木その子式ダイエットに成功して、やせてる最中だから楽しかったんです。独身で、東麻布に住んで、友達もたくさんいて、お金もいっぱい使って、自由で楽しかったなあ。

 29歳の時に週刊文春で連載エッセイを書き始めて、今年はもう還暦ですから、30年間、この連載が続いているんですね。こんなに長く書いているのって、女性では、同じ週刊文春で書いていらした田辺聖子さんくらいでしょうか。田辺さんの「カモカのおっちゃん」エッセイは、一世を風靡した名作で、私も大ファンでした。

「週刊文春」という、良質な大人が読んでいる雑誌で書かせてもらうことは、当時お墨付きをもらったような気持ちでしたね。海外でも「もっとも人気ある週刊誌に連載を持っている」って紹介をされましたよ。

 今読み返してみましたけど、「私、やっぱりエッセイうまいな」と思います(笑)。自分で言うのもなんだけど、内容も古びてないし、つかみも上手い。ネタも多彩で新鮮。ネタがすべてですから、そのために私、かなりアクティブに生きてるところはあります。新しい美容法、流行のお店、最先端だったり貴重な機会だったりしたら、逃さず出かけていきます。話題のイケメンや美女とも積極的に会うし、仲間と楽しく外で食事することも欠かせない。さっきのダイエットの鈴木その子さんは90年代後半に「美白の女王」で大ブームを巻き起こした方ですけど、私っていつも、時代のブームとか事件の渦中の人や場所の近くに、なぜだか居るんです。

 エッセイを書いている人はよく言うことですけど、「事件があちらから寄ってくる」、そんな感じ……30代でも、いろんな人と会ってますね。来日したダイアナ妃、サッチャーさん、そうそう、あのロス事件の三浦和義さんのお宅に招かれて、奥さんの良枝さんに料理をふるまわれながら、三浦家をじーっと観察してる……。

 31歳で直木賞を受賞して、テレビにも出て、独身を謳歌してましたけど、ずっと結婚したかったんです。なのに30代も後半に入って、本気で、自分は一生結婚しないかもしれないと思って……ちょうど谷村志穂さんの『結婚しないかもしれない症候群』という本がヒットしてましたけど、この内容そのものだったなあ。

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「結婚」まで よりぬき80s
林真理子・著

定価:本体630円+税 発売日:2014年10月10日

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