文庫3冊で読む作家

棚に「取扱注意!」の札を下げたい作家
誉田哲也

『あなたの本』『ドルチェ』『レイジ』

相原 聡子|書店員(くまざわ書店アクアシティお台場店)

 棚に「取扱注意!」の札を下げたい! 誉田哲也さんはまさにそんな作家です。

 ファンには「黒誉田さん 白誉田さん」と評されるくらい、その作風は多彩。さらに「さわやか」と「グロテスク」の振り幅が大きい。ああ「取扱注意!」

 今回は、初めて手に取った誉田作品が劇薬系だった方のため(劇薬系も素敵なのですが……)「誉田作品リベンジ!」として読みやすいものをセレクトしてみました。

「どんでん返し」にはまったら、もう誉田ワールドの虜

『あなたの本』(中公文庫)

 7つの短編が収録されています。……がどのお話もジャンルがバラバラ。サスペンス、SF、スポーツ青春もの……などなど。いろいろ書けてしまう方だというのがよくわかる。

 さらに、テンポよく軽妙な会話、魅力的なキャラクター、グロテスクな表現(黒誉田さんの原点)といった、作家の魅力が1冊につまってます。

 一番の特徴は全ての物語が「どんでん返し」で終わること。

 誉田先生って、読者の裏をかく仕掛けを常に考えている気がします。しかも割りと手酷く。

 ドラマで有名になったあのシリーズでさえ「うわあ、そっちですか!」と人気を逆手にとるような仕掛けを入れてくる。ドン引きせずに癖になってしまったら、あなたはもう誉田ワールドの虜です。

人気シリーズものの主人公が全て女性

『ドルチェ』(新潮文庫)

 人気シリーズものの主人公が全て女性、というのも誉田作品の大きな特徴です。

 颯爽として華やかでストイック。だけど、自分の夢中になっていることの中でじたばたしている(素敵な男性キャラクターが周囲にいても)。

 そんな姿が女性読者の共感を得ているように思います。

 本作品では新たに「チャーミングなおばさん」ヒロインが登場。

 今までの誉田ヒロイン達がじたばたしてきた時期を越えた42歳という年齢設定。周囲に対して余裕を持てるようになったけど、まだちょっぴりときめいたり、熱くなったりしてしまう。そんな主人公が、魚住久江刑事です。

 誉田先生の描くカッコいいヒロインには、何か先生からの愛情を感じます。女性の一生懸命な部分へのエールを感じるというか。

 発生する事件は他の作品ほど派手さはないけれど、女刑事「魚住久江」を今後どう動かして進化させていくのかが気になるポイントです。

 凛とした女性への愛情を感じる割りに、他の誉田作品の中には、事件被害者の女性にもんのすごくひどいことがおきたりするものもあります。その辺りがやはり「取扱注意!」作家……。

【次ページ】キラキラさわやかなだけではない成長物語

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