第120回文學界新人賞発表!
加藤秀行「サバイブ」、杉本裕孝「ヴェジトピア」の2作受賞
第120回文學界新人賞が決定し、「文學界」6月号(5月7日発売)誌上で発表された。
受賞作は、外資系エリート2人と「主夫」の奇妙な同棲生活。勝者なき資本主義の戦場をクールに生き抜く群像を描いた加藤秀行の「サバイブ」と、自分を植物だと認識する女性が受胎する時――生殖と死が複雑に絡み合う夢幻の世界を描いた杉本裕孝の「ヴェジトピア」。
「文學界」同号には受賞作の全文と、円城塔、川上未映子、松浦理英子、吉田修一、綿矢りさの5選考委員の選評が掲載されている。
選考について、「文學界」編集長の武藤旬は、次のように述べている。
「今回から、円城塔・川上未映子・綿矢りさの3氏に新たに選考委員に加わって頂きました。節目の第120回にふさわしく、選考会は4時間近くに及びました。受賞2作はどちらもビビットに現代を反映した作品です。常に新たな才能を輩出してきた文學界新人賞に、また新たなページが加わりました」
受賞の言葉 加藤秀行

夕暮れのバンコクの猛烈な渋滞の最中アップビートな音楽が流れる陽気でポンコツなタクシーの中、候補に残ったと連絡を頂いて驚いた。なんと便利で、どれほどスムーズな時代になったことか。
時代のスムーズさに棹さしうっかり流されてしまわぬよう常に自分を疑いつつ、けれども客を無視して小刻みに揺れるあの短髪のドライバーのように大渋滞を諦めながらも楽しげに、夕日に向かってゆるゆると進んで行きたいと思う。
受賞の言葉 杉本裕孝

私をいつも支えてくれる両親、家族、友人たち、私を見出してくださりご支援くださった編集部の方々、そして、選考してくださった先生方に、心より感謝申し上げます。
辛くも、そうせずにはいられない、書くということに、これからも、言葉の力を信じ、精進して参りたいと思います。
最後に、この作品を読んでくださる全ての方々に、心より御礼申し上げます。
ありがとうございます。
文學界新人賞について
次代の日本文学を担う才能の発掘を目指す新人賞。受賞作には賞金50万円と記念品が授与される。応募枚数は400字詰め原稿用紙70枚以上150枚以下。
第121回の募集要項ならびに選考委員からのメッセージはこちら。