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20年に1度の傑作、えらいうれしいですね
東山彰良さん 直木賞受賞会見全文

7月16日、第153回直木賞に東山彰良さんの『流(りゅう)』(講談社)が選ばれました。受賞決定直後に行なわれた記者会見の模様を書き起こしでお伝えします。

1968年台湾台北市生まれ。
2002年「タード・オン・ザ・ラン」で第1回「このミステリーがすごい!」大賞銀賞・読者賞を受賞。翌年、本作品を改題した『逃亡作法 TURD ON THE RUN』でデビュー。

――直木賞受賞、おめでとうございます。ひとことご感想をお願いします。

東山 このたび直木賞を受賞することができまして、本当にうれしく思っています。今日はよろしくお願いします。

――今回の小説、東山さんにとっては、初めて本格的に家族を描くことに向き合った小説だと思います。今回、家族を書くことを決断した理由はなんですか。あと、東山さんにとって家族とはどういう存在でしょうか。

東山 もともとはデビューした当初から、祖父の物語を書こうと思っていたんですが、自分の力があるかどうか、ちょっとわからなかったものですから、今回の小説というのは実は父親をモデルにして書いておりまして、本当に書いている間は、とても楽しく書くことができまして、こういう形に結実することができて、本当にうれしく思っています。 家族の物語を書く意味、ということなんですけれど、僕自身は台湾というところで生まれまして、日本で育ったんですけれど、そういう者にとって、アイデンティティの問題というのは常につきまとうことで、たとえば子どもの頃は台湾と日本を行ったり来たりしていたんですけれど、どちらにいてもちょっと「お客さん感覚」というのがあって、そこの社会になかなか受け入れられないところがあったんですけども、やっぱり家族っていうのは、自分の確固たるアイデンティティが持てる場所ということで、まあ「後付け」になるんですけれども、もしかしたらそんな思いでこの小説を書いたのではないかと、今は思っております。

――今日は、同じ153回の芥川賞が羽田さんと又吉さんの(ダブル)受賞ということで、会見もこういう派手なことになりましたけれど、その場に身を投じて思うことがあれば、お聞かせください。

東山 非常によかったと思います。みなさんが芥川賞に注目して、そのついでに直木賞にも注目していただければ、僕としては、あの……丸もうけだと思います(笑)。

――(台湾の記者から)いま台湾ではすごく、みなさんうれしいです。台湾の人たちにひと言、お願いしたいです。

東山 はい。ええと、台湾というのは僕の国なんですけれども、いずれこの本が、もし中国語に翻訳されることがあって、台湾の読者にも届くことがあれば、本当にこれに勝る喜びはないと思っています。そろそろ僕も台湾の食べ物が恋しくなってきているので、近々帰りたいなと思っています。

――今回、初めて台湾を描いた物語で、選考委員の北方(謙三)さんは、「(東山さんが)これから書く作品について、まったく心配していない」とおっしゃっていました。受賞して、これからの作品をどういうふうに書いていこうという思いがおありでしょうか。

東山 北方さんは「心配ない」と言ってくださっているようで、すごく心強いんですが、僕は心配だらけです。この中に、自分の記憶というか、家族の物語をある程度のフィクションにしてしまう、そして、それがこのような大それた賞をいただく、ということになったことについて、もしかしたら次もまた、同じような家族の物語であったり、青春小説であったりってふうに期待されるかもしれないと思うと、もしかすると自分の可能性を狭めてしまうんじゃないかという風にも思えます。なので、次から書く小説はまた原点に戻って、自分が楽しいと思えるもの、またゼロから生み出せるようなもの、フィクションの色合いが強いものをこれからまたどんどん書いていきたいな、という風に考えています。

――いま東山さんがおっしゃった心配には、北方さんも「あらゆる方向に可能性をもっている」とおっしゃっています。青春小説とか、家族小説に限定されないというか、そのなかで北方さんは「20年に1度の傑作だ」という言い方もされていました。まずその言葉をうけて、ご自分ではどう思ってらっしゃいますか。

東山 20年に1度の傑作と言われたことは、それは、えらいうれしいですね(笑)。

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