インタビュー・対談
『君の膵臓をたべたい』 (住野よる 著)

「僕」が見つけたクラスメイトの秘密の日記帳。涙が止まらない感動のデビュー作

『君の膵臓をたべたい』 (住野よる 著)

聞き手「別冊文藝春秋」編集部 

 住野よるさんのデビュー作が、大きな話題を呼んでいる。

 まずタイトルが秀逸だ。字面からは不穏な空気が漂っているが、表紙は満開の桜の前に高校生の男女がたたずむ。なぜこのタイトルになったのか?

「小説自体が読者の目に止まらないといけないと思ったんです。この言葉が思い浮かんだとき、これなら読者が目を向けてくれるかもしれないと感じ、タイトルに使おうと決めました。主人公の二人に『君の膵臓を食べたい』と言わせたいがための小説なんです。そのためにいろいろと仕掛けを作ったり、このセリフが出てくるまで読者を飽きさせないよう、会話も工夫して書いています。タイトルがあって、そこに物語がついてきて出来た小説です」

 とはいえ、デビューまでの道は平坦ではなかった。多くの場合は、何らかの新人賞を受賞したのちそれが出版される。だが、住野さんは賞を受けたわけではなかった。

「もともと電撃小説大賞が獲りたくて、応募していました。でも一次選考すら通りませんでした。その頃は超能力が出てきたりするいかにもライトノベルというものを書いていたんです。でも、そうやって書いたものが箸にも棒にもかからなくて……完全に自分の得意分野を見誤っていたのかもしれません(笑)。

 それで別のテイストのものに挑戦しようと書いたのが『君の膵臓をたべたい』でした。ところが書き上げてみると、規定より分量が多くなり応募ができなかった。他の賞に応募しても結果はふるわず、でも誰かに読んでもらいたくて、『小説家になろう』に投稿したんです。そこで声をかけていただき、デビューすることができました」

 小説投稿サイト「小説家になろう」には、軽く三十万を超える作品が掲載されている。その中からいかにして住野さんは見いだされたのか。

「ライトノベル作家の井藤きく先生が、双葉社の担当の方に面白い小説がある、と言ってくださったんです。でもランキングに入っていたとか、たくさんコメントが付いていたわけではありませんでしたから、どうやって目に止まったのか不思議でした。あとで担当編集者さんに聞いてみると、一つ一つのコメントがとても熱心に読み込んだものだった、と。そういう話を聞くと嬉しいですね」

 物語は、「僕」がクラスメイトの山内桜良から「君の膵臓を食べたい」と告げられるところから始まる。「僕」は教室に一人でいるタイプの地味な生徒だ。一方桜良は明るく友達も多いクラスの中心人物。桜良は膵臓の病気で余命いくばくもなく、彼女はそれを家族以外には秘密にしている。ところが、「僕」はある偶然から彼女の病気のことを知ってしまう。まったくタイプの違う二人が共有した秘密。二人はどんな時間を過ごしていくのか――。

「高校生くらいだと、明るくて友達が多い人が目立ちます。でも個人的には、むしろあまり喋らない人の方が気になります。一見何の主張もないように見えるけど、絶対いろんなことを考えていると思うんです。『僕』は一人でいることに慣れていますが、クラスの中心にいる桜良に憧れてもいる。目立たない奴のことも理解してほしい、という思いも込めてこの物語を書きました」

 ちなみに「僕」の名前は、最後の最後まで明かされないが、それも作者が無数に張り巡らせた仕掛けの一つ。是非手に取ってその謎を堪能していただきたい。

    ◇    ◇

『君の膵臓をたべたい』 双葉社 本体1400円+税

住野よる(すみのよる)
大阪府在住の兼業作家。高校時代より執筆活動を開始。本作がデビュー作。

掲載別冊文藝春秋  2015年11月号

別冊文藝春秋 電子版4号(通巻320号/2015年11月号)

定価:※各書店サイトで確認してください
発売日:2015年10月20日

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