エッセイ

温泉のひみつ~羽田圭介さんに湯に目覚めてもらう

山崎 まゆみ
ニセコ昆布温泉から始まった羽田さんの紀行は、登別、十勝岳、然別、養老牛へと続いた

 昆布温泉の緑色の湯は、全国でも珍しく、湯の中に含まれる藻が光合成をして緑色になるという見解もありますが、理由は解明されていません。ファジーながらも、その神秘さこそが温泉の魅力!

「湯を持ち上げてみてください。湯と語らってください。感じてください」

 温泉との向き合い方を伝えると、

「は?」そして、「う~~」と悶絶する羽田さん。そして、「パンプアップしないと!」と、湯船からあがり、腕立て伏せを始めたのです。羽田さんらしいサービス精神を存分に発揮され、とにかく、懸命に“湯”に向き合ってくれていました。

 数々のテレビ番組に出られている羽田さんですが、紀行番組は初めてだったようです。翌朝のご感想は、「小さい頃から、芸能人が美味しいもの食べて、温泉入って、なんて楽な仕事なんだと思っていましたが、こんなに疲れるなんて! (長い時間)温泉に入ると、疲れるんですね、昨夜は十時間も寝ましたよ」。

 温泉の違いはわかりましたか? と尋ねてみると、

「最初はわからなかったけど、だんだんピリピリするとか、こんなに違いがあるんだって、驚きました」

 私はロケの前半部分をご一緒しましてその後、羽田さんは北海道各地の名湯巡りに向かわれました。五日間のロケでは台風上陸、雪が降りロケ車が動けなくなるなど、ハプニングの連続だったようです。すべてのロケを終えた羽田さんは、

「日頃都会で感じている、都会で囚われている自分の価値観が、わりと世間の中で作られたものでしかなくて、その価値観を果たして大切にしていく必要があるのかと思ったりとか。何を大切に思って、何を優先させるかということをすごく考えましたね」

 と、コメントしておられました。

 そうなんです。裸で自然の中に溶け込み、浴びるように湯に浸かると、どかんと頭を殴られたかのように、一度は放心状態になるのです。そして気づいた時には、常識とか、一般的概念とか、そんなもの全てがとっぱらわれてしまう。

 ちっぽけな自分に気づくことができる。それこそが温泉の力なのです。

●ニセコ昆布温泉「ニセコグランドホテル」
北海道虻田郡ニセコ町ニセコ412番地
TEL 0136-58-2121
♨ナトリウム-塩化物泉/ナトリウム-炭酸水素塩泉

掲載オール讀物 2015年12月号

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羽田圭介・著

定価:本体1,200円+税 発売日:2015年08月07日

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オール讀物 2015年12月号

定価:980円(税込) 発売日:2015年11月21日

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