別冊文藝春秋 ただいま連載中

歌舞伎町は怖くて楽しい? 棲息する刑事たちの物語

安東能明「未練」

安東 能明 プロフィール

あんどう よしあき/1956年静岡県生まれ。94年「褐色の標的」で日本推理サスペンス大賞受賞(同作は『死が舞い降りた』として刊行)。2001年『鬼子母神』でホラーサスペンス大賞特別賞、10年「随監」で日本推理作家協会短篇部門受賞。著書に『着底す CAドラゴン2』『浸食捜査』『出署せず』など多数。

 二十二歳だったろうか。新宿歌舞伎町の新宿ミラノ座で、スター・ウォーズ第一作を見た。かれこれ四十年ほど昔だ。高校生のころ、映画雑誌の片隅にハリウッドで大がかりな宇宙SF映画を作りかけている、という記事を見つけて以来、わくわくしながらその日を待ち望んだのだ。ところが、あろうことかその前日、徹夜でアルバイトをしていたので、迂闊にも途中で眠り込んでしまったという塩っぱい経験がある。

 そのころ、歌舞伎町はディスコの全盛期で、夜っぴて仲間とともに踊り狂い、夜明けの一番電車でとぼとぼとアパートに帰るという日を送っていた。歌舞伎町で怖い目に遭ったことは一度もなかった。いつも油断しきって、その懐にどっぷりとはまり込んでいたのだ。基本的にいまの新宿も歌舞伎町も、そのころと変わりはないのではないか。遊びに出かける人々は、たぶん皆そう思っている。暴力沙汰やぼったくりバーがあるのは知っているが、それはスリリングな遊びのちょっとしたスパイスと割り切って。

 そんな街を舞台にした警察小説を書いてゆこうと思う。新宿警察署は、高層ホテル街の中にあるので目立たないけれど、実は日本で最多の警官が配備されているマンモス警察署でもある。そこで目を光らせている刑事たちは、きっと一般人とは異なる目で新宿という街を見ているのかもしれない。それを表に出していければ、何とか小説として成り立つのではないかなと思っている。よろしくお願いします。

「別冊文藝春秋 電子版6号」より連載開始

別冊文藝春秋 電子版6号(通巻322号/2016年3月号)

定価:※各書店サイトで確認してください
発売日:2016年02月19日

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