インタビュー・対談
『僕はこうして科学者になった 益川敏英自伝』 (益川敏英 著)

若者よ、憧れとロマンを持て――あと、英語は大事。

『僕はこうして科学者になった 益川敏英自伝』 (益川敏英 著)

聞き手「本の話」編集部 

――2008年にノーベル物理学賞を受賞された際に、「大してうれしくない」と言って話題になりましたね。

「あれはね、本当に腹を立てていたんです。あの時ノーベル財団から電話がかかってきて、『1時間後に世界に発表しますから受けてもらえませんか』と言うんです。いちおう『ありがとうございます』と言って電話を切ったんですが、だんだん腹が立ってきてね。賞というものは普通、数日前に内定を報せ、受けてもらえるかどうか返事を待つものでしょう? 1時間後に発表なんて、受けて当然、辞退する人なんかいないでしょと言っているふうに聞こえました。だからつい、『大してうれしくない』と口に出たわけなんです。

 でも、授賞式でスウェーデンに行ってみると、楽しかった。ノーベル財団は小さな組織だけど、対応がエレガントだった。ゆったりしたスケジュールで、滞在を楽しんでほしいという心遣いがあった。ひとりひとりにアテンダントがつきましたが、僕が英語ができないのは知られていて、奥さんが日本人で日本語のうまい通訳の人をつけてくれました」

――ストックホルム大学での受賞記念講演も、特別に日本語でされたものでした。

「最初にアイム・ソーリー、アイ・キャンノット・スピーク・イングリッシュと言ってね、あとは日本語。英語嫌いは中学1年のときからで、先生に当てられたときにマネー(money)を『もーねい』と読んだ。するとクラス中が大爆笑。先生まで『もーねいか。確かにお金はすぐなくなる』と笑う。それですっかり英語は性に合わないと捨ててしまったんです。今に至るも、英語は苦手。でも英語の論文を人に訳してもらっていては商売にならないから(笑)、読むほうは出来ます。けど、喋ったり書いたりはできない。論文は誰かを共著者にして書かせます(笑)」

――では英会話は出来なくても大丈夫ですか?(笑)

「これから科学者になろうとする人は、そうはいかないでしょうね。かつて我々の学生時代はクイーンズイングリッシュでないといけないとされていたけれど、今では国際学会に行ってもインドなまりでもブラジルなまりでも、みんな平気で英語をしゃべってるから、日本人も下手でも気にしないでしゃべればいいんですよ」

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僕はこうして科学者になった 益川敏英自伝
益川敏英・著

定価:本体1,300円+税 発売日:2016年07月25日

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