オール讀物・担当編集者は語る

「向田邦子を忘れない」
35年目の夏に寄せて――

プロフィール

おーるよみもの/創刊以来、常にエンターテインメント小説の最前線を追いかけ続けてきた小説雑誌です。年に2度、全国の小説ファンが注目する直木賞も本誌で発表されます。戦前の「銭形平次」をはじめとして、池波正太郎さんの「鬼平犯科帳」、今現在では平岩弓枝さんの「御宿かわせみ」を代表とする数多くの人気シリーズほか、大家も期待の若手作家も、時代小説も現代小説も推理小説も、今の小説界がここに盛り込まれている、と断言できます。また、旅行、食べ物、教養、人物評伝など「讀物」も満載、活字における娯楽の愉しみを今後も追求していきます。

台湾での不慮の飛行機事故で亡くなってから35年。珠玉の作品を数多く残し、多くの女性がその生活スタイルを憧れとして、歳月を経てもなお語り継がれる向田邦子さんの魅力に迫る。

久我山の家で、飼い猫の“ビル”と一緒に。右から邦子さん、次姉の迪子さん、和子さん

「オール讀物」8月号で向田邦子さんの没後35年を特集するにあたり、まずお話を伺ったのは9歳下の妹・和子さんでした。かつて赤坂で「ままや」という小料理店を営み、『向田邦子の遺言』『向田邦子の恋文』などの著者としても知られています。

 ホテルの喫茶室に約束の時間に現れた和子さんは、開口一番、「運動不足にならないよう、ここまで歩いてきたのよ」と颯爽とされていて、とても喜寿を迎えたとは思えません。向田邦子さんを担当した編集者OBも同席し、『父の詫び状』を読んだときの家族の反応、好きだったお酒や料理の話、お世辞にも筆が速いとは言えなかった原稿をめぐる逸話……在りし日の姿を生き生きと語られました。

「沢山の記事や番組を作っていただいて、新しい話はそんなにないんだけど」という中で、これまではあまり触れられなかったのが、父の転勤に伴なって家族で暮らした鹿児島や仙台時代のこと。特に仙台に住んでいた頃は、邦子さんは東京の学校に通っていたため、帰省は盆暮れの長期休暇のみ。その間、映画館や海に連れて行ってもらったこと、眠る間もないほど家事を手伝っていた姉の姿が、鮮明に記憶に残っているそうです。

桜庭一樹さんが訪れたかごしま近代文学館。「ままや」で実際に使われていた暖簾も展示

 そこで今号で実現したのが、愛読者の直木賞作家・桜庭一樹さんによる「鹿児島感傷旅行」。和子さんが寄贈した遺品が数多く所蔵、展示されている「かごしま近代文学館」で、最後の小説となった「春が来た」(小誌昭和56年10月号掲載)の生原稿や、「う」の抽斗、向田邦子さんの肉声が聞ける留守番電話など、縁の品を見学した後は、かつて向田一家が暮らした社宅跡にも足を伸ばしました。その模様は、巻頭グラビアでご覧いただけます。

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オール讀物 2016年8月号

定価:980円(税込) 発売日:2016年07月22日

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