インタビュー・対談
『蜜蜂と遠雷』 (恩田陸 著)

音楽の「才能」とは何なのか――。

『蜜蜂と遠雷』 (恩田陸 著)

聞き手「オール讀物」編集部 

 構想5年、執筆7年――「著者渾身、文句なしの最高傑作!」と帯にあるが、本書はまさにその言葉を裏切らない。『夜のピクニック』『チョコレートコスモス』をはじめ、これまでも優れた青春群像劇を送り出してきた作家・恩田陸が、読者を壮大な未知の世界へと案内してくれる。

「ピアノコンクールを最初から最後まで小説で書いてみたいと思っていました」

 舞台に設定したのは、芳ヶ江国際ピアノコンクール。新たな才能を発掘する場として、世界的にも注目を集めている。世界各国のオーディションを通り、第一次予選に臨むのは、亡き伝説的音楽家の推薦を受けた無名の風間塵(かざまじん)、かつて天才少女としてデビューしながら表舞台から消えていた栄伝亜夜(えいでんあや)、ジュリアード音楽院の秘蔵っ子マサル・カルロス、そして普段は楽器店勤めで28歳という年齢制限ぎりぎりで参加した高島明石……。

「モデルとなった3年に一度開催される浜松国際ピアノコンクールは第6回から聴き始めて、並行して原稿を書きながら第9回まで通いました。おかげで多少は耳が肥えたと思いますが、技術的にはほとんど差がないのに、最終の本選まで残れる参加者はほんのわずか。才能ってなんだろう? 天才ってなんだろう? って、この小説を書きながらずっと考えていました」

 さらに執筆の上で苦心したのは、コンテスタントらが各ステージで弾く、プログラムを決めることだ。自身も高校までピアノに親しみ、大学時代はジャズバンドにも参加した愛好家だが、登場人物同様に悩みぬいて構成した。

「演奏シーンは最初から最後まで苦しみました。特に、一次、二次とコンクールの予選が進むにつれて、一度使った表現はもう使えませんから、どんどんバリエーションが少なくなってきて、三次の辺りがいちばんつらかった。もう本選は書かなくていいんじゃないかと泣き言を言ったら、担当編集者に怒られてしまいました(笑)。大変だったけど、演奏者の内面を描くのは小説でしかできないから、意外に小説と音楽は親和性があるな、とも思いましたね」

 熾烈なコンクールの勝者となるのは、いったい誰なのか。

「作者自身、本当に最後まで順位を決められず、正直、もう誰が優勝でもいいんじゃないかと(笑)。最後の最後に結果は決めましたけど、ああ、私が書きたかったのは、同じステージに立つ演奏家たちが互いにインスパイアされて、どんどん成長する、そこが書きたかったんだと気付きました。そういう意味では、書き尽くしたと思います」

恩田陸(おんだりく)

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』でデビュー。2005年『夜のピクニック』で吉川新人賞、本屋大賞、07年『中庭の出来事』で山本周五郎賞ほか。

掲載オール讀物 2016年12月号

蜜蜂と遠雷
恩田陸・著

幻冬舎 定価:本体1,800円+税 発売日:2016年09月23日

詳しい内容はこちら

オール讀物 2016年12月号

定価:980円(税込) 発売日:2016年11月22日

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