インタビュー・対談
僕らの上京物語

林真理子×マキタスポーツ 「山梨」発「野心」経由のふたり【後編】

聞き手「オール讀物」編集部 

世の中のイメージを裏切りたい

マキタ 真理子先輩は、幼い頃から自分が何を面白いと思うのか、そしてその本質をどうやって文章で表現するのか、という作家としての核を育てていらしたんだと思います。だから、『葡萄が目にしみる』のような青春小説から、明治の宮廷のスキャンダルを描いた『ミカドの淑女(おんな)』のような歴史小説まで書かれる幅の広さをお持ちでいらっしゃる。

 ありがとうございます。この後、マキタさんも苦しむと思うんですが、人ってすぐキャッチフレーズを付けたがるんですよね。私は「あ、『ルンルン』書いてる人よね」とか「テレビに出てる人よね」ってよく言われたのですが、決めつけられるのは腹が立つんです。だから、「こういうジャンルの小説も書いていますよ。これも私なんです」ということを次々と見せていくのが、作家として表現するということではないかなと思います。

マキタ 一九八六年に直木賞を受賞された頃は、テレビにも引っ張りだこでしたが、そのままタレント活動をメインにしようとは考えませんでしたか?

 もちろん考えましたよ。書くことはすごく大変だったし、テレビは朝シャワーを浴びていけばメイクも髪の毛もしてもらえるし、これは楽だなと思ったの。でも、出演した番組が全部視聴率悪くて打ち切りになってしまうし、「林真理子は引っ込め」って叩かれるし。間違ったことをしたって気づきましたよ。マキタさんもそうだと思うけど、テレビに出ていると外に向かってエネルギーを費やすから、書くためにそのエネルギーを内に入れるように切り替えるのって、時間がかかるでしょう。

マキタ ほんとうにそうですね。

 私はテレビに出てたとき、それができなくて倒れちゃったもん。

マキタ テレビに出ることは気を使います。それはそれで僕も嫌いではないんですけど、書く作業をするときの気持ちとは全然違いますね。林さんも腱鞘炎になったり、腰が痛くなったりしたそうですが、以前「体が変形するほど書いてこそ、プロの作家だ」とおっしゃっておられた。そういう姿を拝見すると、コピーライターや、テレビ出演者と居場所を変えながら、天職を見つけるように作家になっていらっしゃいますね。

 でも、世の中から誤解されてるようなんですけど、私ふだんは、そんなにキリキリカリカリしていなくて、ボケーッとしてるんですよ。

マキタ 毎日、どういう時間割で仕事をされているんですか?

 毎朝六時に起きて、娘のお弁当を作ります。それで朝ドラを見て、その後大好きなワイドショーを見る。で、仕事しなきゃと思うんだけど、ちょっと疲れて、犬の散歩もよくさぼっちゃいます。その後、新聞を読みながら、もらいもののお菓子を食べるのが至福のときなんです。十時近くなると、秘書とお手伝いさんと打ち合わせをして、それから新聞の連載小説や短いエッセイを書いたりすると、すぐ午後になっちゃいます。午後は大体対談やインタビューが入っていますね。自分の小説の取材や、資料読みもしないといけないのですが、夜の十二時を過ぎると、もうぜんまいが切れちゃって。

マキタ 直前まで執筆をしていても、すぐに眠れますか?

 私、睡眠導入剤って使ったことがなくて、枕に頭をつけたら一分以内に寝られるんです。これが私の健康の秘訣だと思います。

マキタ 『野心のすすめ』を最近読み返して、気が緩んでいたなと姿勢を正される思いだったのですが、少し安心しました(笑)。いつまでもお体に気をつけて、ご活躍なさってください。僕も、同郷の若い人たちに恥ずかしくない仕事をしていきたいと思っています。

写真◎原田達夫

掲載オール讀物 2017年1月号

オール讀物 2017年1月号

定価:980円(税込) 発売日:2017年12月22日

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