モテ読書

「書店で恋」の変化

プロフィール

いぬやま かみこ/1981年、大阪府生まれ。イラストエッセイスト、コラムニスト。大学卒業後、仙台の出版社でファッション誌の編集を担当。2011年、美人なのに恋愛で負けている女子たちの生態に迫った『負け美女 ルックスが仇になる』で、デビュー。ユーモア溢れる独自の視点が高く評価され、雑誌、テレビ、ラジオなどで幅広く活躍中。主著に、『女は笑顔で殴りあう マウンティング女子の実態』(瀧波ユカリとの共著)、『SNS盛』『地雷手帖 嫌われ女子50の秘密』などがある。

 中目黒駅前高架下に蔦屋書店がオープンしました。書籍が豊富というよりは、ファッション誌、海外誌が多い印象で、展示など文化の発信の場として使われている感じ。近くにはマーガレットハウエルやシャンパンとフレンチトーストのお店などお洒落な店が並んでいるので、こういった構成になるのは納得。書店、というより「ふわっとしたお洒落な場所」くらいの感覚で行くのが良いかもしれません。

 蔦屋書店といえば、そのお洒落ないでたちで人々の心を様々に揺さぶった書店であります。「好きな子と蔦屋書店で本を見て、その後カフェで本を読みながら軽くランチ」と積極的に使う派、「さほど本を好きでもない奴がおしゃれってだけで集まっていて鬱陶しい」とファッションピープルに毒づく派、「おしゃれかどうかなんてどっちでも良い、本が豊富でいいじゃない」とフラット気取る派などなど。

 そして、私も例に漏れず代官山の蔦屋書店に出没しています。あそこは、代官山在住と思われるセレブ達が犬の散歩をよくしており、結構な割合で犬を撫でられること、そしてカフェのオープンテラスには雀が近くまで寄ってくるので、プチ動物園としての機能を果たしてもいるんですよ。ミニコミ好きにとっては、ジンが豊富なのも嬉しい。難点を挙げると、客がやたらとお洒落してくるので、すっぴんで行きにくい空気がめんどくさいです。

 そして、この代官山蔦屋書店ではナンパも発生している模様であります(しかもうまくいっているらしい、ネット情報)。あんだけ男女ともにお洒落して集まるんですもの、そういう浮ついた気持ちになるのかもしれません。かわいい女性も多いですし、そういう子はオープンテラスできっちり見せつけてくるしで、わかりやすい。

 そこで思ったのが、書店で生まれる恋は随分変化してきているんだなあということ。これまでは「書店員のお姉さんへの淡い恋心」「自分が興味のある本を手に取っている素敵な人にときめく」など、外には発散させず自分の中で温めるものが多かったし、書店は本が苦手な人間があまり入ってこない聖域感も強かった。だから書店から生まれる恋はよく小説や映画の題材になっていたのでしょう。

 でも、こうやって書店がサロン的な場所になったり、どんどん本を売るだけの場ではなくなっていくと、そこから生まれる恋愛模様も変わってくるはず。それは嘆くことでもないのだけど、どうにも寂しい気がしてしまう。こういうことに寂しさを感じるたびに、年をとったんだなあとしみじみするのであります。

掲載文學界 2017年2月号

文學界2017年2月号

定価:970円(本体898円) 発売日:2017年01月07日

目次はこちら

関連ワード

登録はこちら