インタビュー・対談
『喧嘩(すてごろ)』 (黒川博行 著)

極道と政治屋の化かし合い

『喧嘩(すてごろ)』 (黒川博行 著)

聞き手「オール讀物」編集部 

 イケイケヤクザの桑原保彦(くわはらやすひこ)と、ヤクザの嫌がらせを別のヤクザを使って抑える“サバキ”の仲介をする建設コンサルタントの二宮啓之(にのみやけいすけ)。お互いを“疫病神”と煙たがる名コンビが2年ぶりに帰ってきた。シリーズ第6弾の『喧嘩(すてごろ)』の相手は、選挙汚職や裏口入学の口利きなど、数々の悪事に手を染めた議員やその秘書たちだ。

「腹黒い議員たちの裏仕事なんてようあって、『党員名簿を君に譲るよ』なんて嘘をつくのも日常茶飯事だから、話のネタには困らなかった。特に地方議員は、大物になると国会議員より力を持っているし、年間80日ほどしかない会期以外は遊ぶか、利権漁(あさ)りをたくらんでいる。その秘書なんて、議員の代紋を利用してシノギをしている個人事業主ですからね。そういう意味でヤクザと寸分変わらない」

 年の暮れも迫ったある日、二宮は高校の同級生の長原聡(ながはらさとし)から相談を持ちかけられる。長原は北茨木の代議士、西山光彦(にしやまてるひこ)の私設秘書をしているが、その西山の事務所に火炎瓶が投げ込まれたのだ。犯人は、大阪府議会議員の補欠選挙で票のとりまとめを頼んだ麒林(きりん)会に違いないから、二宮のサバキで麒林会を収めてほしいのだという。

 しかし、麒林会の背後には100人以上の構成員を持つ神戸川坂会直系の鳴友(めいゆう)会が控え、知り合いのヤクザから軒並み協力を断られた二宮は、やむなく桑原に連絡をする。ところが二蝶(にちょう)会の若頭補佐だった桑原は、前作の『破門』で、本家筋の組と事を構えたために破門されているのだ。代紋が無い桑原に何ができるのかも読みどころだ。

「事実として、破門されたヤクザは生きていけない。借金一つとっても、組の防波堤がなくなるから、貸した金は返ってこないし、借りた金はものすごい勢いで取り立てられる。そもそも堅気になったとたんに、シノギがなくなるから食えなくなるんです」

 一方の二宮も、暴力団排除条例以降サバキの依頼が激減し、生活に窮している。女性関係も依然パッとしない。

「二宮はせこくてヘタレ。自分の性格が、ほんまそのまま出てます。でも、できるだけヘタレに書いた方が『俺はここまでひどくないぞ』って読者は面白がってくれる。むかし、色川武大さんに、どうして主人公がバクチで負け越してばかりなのか理由を聞いたら、『強い者や勝った者に読者は共感しない』って言われて納得したんです」

 今作のラストでは、破門された桑原に新展開の予感もある。最新作の「泥濘(ぬかるみ)」は「週刊文春」新年特大号(12月28日発売)から連載が始まる。2人の活躍から目が離せない。

黒川博行(くろかわひろゆき)

1949年愛媛県生まれ。86年『キャッツアイころがった』で第4回サントリーミステリー大賞を受賞。2014年『破門』で第151回直木賞受賞。

掲載オール讀物 2017年1月号

喧嘩
黒川博行・著

角川書店 定価:本体1,700円+税 発売日:2016年12月09日

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オール讀物 2017年1月号

定価:980円(税込) 発売日:2017年12月22日

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