連載
文春写真館 あのとき、この一枚
奥村土牛は大器晩成だった

奥村土牛は大器晩成だった

「文藝春秋」写真資料部

 奥村土牛は明治二十二年(一八八九年)生まれ。親の理解から若くして画家を志し、梶田半古門下の小林古径の指導をうけた。

 〈 (大正九年ごろ)小林先生が始終、丸善へ行って、後期印象派か、ルネッサンス期のいろいろな画集を年中買ってみえるんですよ。そのころ私はセザンヌのとてもいい画集を買ってもらいましてね。それからセザンヌが好きになって、その後セザンヌのあらゆるものを集めてみたんですよ。素描から何からね。その素描で日本画に得るところないかと思って、それを模写したりしました。それで私の絵は不思議な描き方なんだと自分で思っています〉

〈でき上りはなめたようになめらかで美しいのですが、途中はすごくきたないですね。だから私の絵は途中で、人に見せられないです。日本画のいわゆる決った描き方でないものですから〉(「三彩」昭和四十八年=一九七三年七月号)

 昭和二年(一九二七年)、三十八歳にして「胡瓜畑」で院展に初めて入選する。代表作のひとつ「鳴門」は七十代、「醍醐」は八十代のときに発表し、大器晩成と呼ばれた。平成二年(一九九〇年)没。

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